歯を守るために
矯正治療は小児矯正(Ⅰ期治療)と小学校高学年以降の本格矯正(Ⅱ期治療)に分かれます。
建築に例えれば、小児矯正は言わば土台を作る基礎工事であり、本格矯正は建物の工事にあたります。
不正咬合の多くはアゴの発育不良が原因であることがわかっています。Ⅰ期治療では歯並びのアーチを広げたり、アゴの成長をコントロールし発育を促すことで歯並びの土台を整えます。
Ⅱ期治療ではブラケットという歯に直接装着する装置を使って土台の上に安定した歯並びを作ります。

小児矯正の役割とは?
歯並びの発育を促し、不正咬合を軽減させるため、大人になってから矯正するよりも抜歯をする確率が減ったり、本格矯正の期間が短縮したり、口腔機能を整えることで治療後の後戻りも最小限に抑えることができます。さらに、早期に歯並びを整えるため歯を磨きやすく、虫歯になりにくい環境を作ります。
成長期を過ぎ骨格が固まってからは基本的に歯の改善しかできませんが、小児矯正では口腔機能を整えたり、歯並びや顎の成長をコントロールすることで骨格の改善が行えます。
いつ頃から始めるの?
不正咬合のほとんどは歯並びやアゴの発育に問題があることで生じます。この発育不良は呼吸、発声、咀嚼、嚥下などの口腔機能の低下が原因であり、西洋化した食習慣やアレルギーの増加が影響していると言われています。
歯並びの発育に問題があるとともに口腔機能に問題を抱えているお子様に対して、早ければ4歳ごろから口腔機能トレーニングを行います。第一大臼歯が生え揃う時期である4歳から6歳ごろにこのトレーニングを行うことで歯ならびの発育が促されることがわかっています。
その後、約6歳~小学校低学年を目安に床矯正装置で歯並びのアーチを広げたり、ファンクショナルアプライアンスを用いて上下のあごの骨のバランスを整えることで永久歯がきちんと生える準備をします。この時期の治療は主に取り外しができる装置を用います。
口腔筋機能トレーニングとは?
第一大臼歯が生え揃う時期を目安に行います。患者さまの状態によってトレーニング方法は異なりますが、主に舌機能を向上するためのトレーニングを行います。舌の挙上練習、正常嚥下の練習、咀嚼トレーニングガムを使用した咀嚼練習などを約3か月行います。レーニングをすることで歯並びの発育が促進することがわかっています。
難しいトレーニングではありませんが、続ける自信がない、子供にできるか不安、との意見がありますが当歯科クリニックではトレーニング方法を「簡単」にさらに、「続ける技術」というものに真剣に取り組み、練習継続の支援をしています。
本格矯正(小学校高学年~中学校)
小学校高学年以降で、永久歯が生えそろったお子様が対象です。
Ⅰ期治療で整った土台に透明なセルフライゲーションタイプブラケットと柔軟性ワイヤーによる固定式の装置で歯並びを整える治療システムです。
従来の矯正力の半分ほどの力で歯を動かすため、痛みの発生を最小限に抑えることができます。
本格矯正に移行した方の平均治療期間は歯を抜かなかった場合1年から1年6か月程度、永久歯を抜いた場合1年6カ月から2年ほどで治療を終了することができます。また、本格矯正から始める方と比べてコストを抑えることができます。
最後に
お子様がある程度の年齢になってからは虫歯を作らないようにするのは本人の責任ですが、歯並びは本人が改善することはできません。矯正治療はお子様の人生を豊かにするために親御さんがしてあげられる最高のギフトの一つです。
小児矯正症例
症例1
10歳男児:小学生
- 矯正のきっかけ:
- 顎のしゃくれを治したい(母親の希望)
- 抜歯:
- なし
- 上:
- ムーシールド
- 下:
- なし
- 治療期間:
- 約8ヶ月

症例2
10歳女児:小学生
- 矯正のきっかけ:
- 永久歯が並ばないから
- 抜歯:
- なし
- 上:
- Distalize(床矯正装置)セラミックブラケット
- 下:
- なし
- 治療期間:
- 約2年

子供の矯正歯科 患者様からよくある質問
- Question 1
- 小児矯正をすれば歯を抜かないで済むのでしょうか?
- Answer 1
- 歯を抜かないことを目的に小児矯正をするわけではありませんが、結果的に抜歯の確率は減少します。
小児矯正では歯並びのアーチを広げたり、顎の成長をコントロールすることで骨格のズレを補正します。不正を軽度にすることができるため、その後の本格矯正治療の選択肢が増え、非抜歯での治療の可能性が高まります。より良い状態で本格矯正ができることで治療期間が短縮でき、結果的にコストが安くなります。また、口腔機能を整えることで後戻りも少ないなど患者さまの負担が少なくなります。
- Question 2
- 小児矯正のみで終わることはあるのでしょうか?
- Answer 2
- 基本的にⅡ期治療(本格矯正)を必要とします。
小児矯正で改善できるのは歯が並ぶための土台であり本当に基礎的な部分です。この基礎をしっかりしておくと、不正咬合を軽度にでき、その後の治療の選択肢が増えるなどのメリットがあります。基礎工事(小児矯正)をした後は、その上にしっかりとした建物の工事(本格治療)をすることで噛み合わせが永続的に安定します。
- Question 3
- 子どもが成長期を過ぎても矯正はできますか?
- Answer 3
- 本格矯正からのスタートでも十分可能です。
歯並びの程度が悪くても大半の場合で本格矯正からでも治療はできます。本格矯正からのスタートの場合、小児矯正のように効率的に骨格から改善することは難しいかもしれません。しかしながら、骨や筋肉が発育段階であり、その柔軟性を利用してできる限りの骨格の改善とともに歯並びの治療を行います。本格矯正は小児矯正からの開始と比べて子ども本人の負担が大きいですので、なるべくお子様については早めの受診をお勧めします。
- Question 4
- 子供の歯並びはいつ頃相談したら良いのでしょうか?
- Answer 4
- 当院では4歳ごろからの検診を勧めております。
不正咬合のほとんどは歯並びとアゴの発育に原因があることがわかっています。発育不良が形として見えてくるのは4歳ごろです。この時期から矯正を始めることはありませんが発育に影響する口腔機能の指導を4歳ごろに受けていただくことでその後の発育が良好になることがあります。実際に小児矯正を開始する目安は第一大臼歯が生え揃う6才頃です。